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予防が大事なのは、皆さんが知っていること。予防方法は、学んだ方だけが知っていること。
私は、患者さんの歯を削りたくありません。皆さんだって、削られるのが好きな方はあまりいないと思います。それにも関わらず、歯科医院には痛くなってから行って削られるって、おかしなことではないでしょうか。削ることではなく、あくまでもご自分の歯で食事し続けられるようにすることが、私のゴールです。そのために必要なことを提案するため、予防に特化した歯科医院を作ることにしました。
あなたのお口の健康は「当院にお任せ」しないでください。
歯科医師の前でお口を開けていれば、お任せで治療が済んでまた噛めるという感覚の方は、よくいらっしゃいます。でも、そうした方は再発するリスクが高く、数ヶ月から数年すると「なんでまた悪くなったんだ」と言って治療に訪れるのです。なぜまた悪くなるのか、知っていたらその治療を避けられたかもしれません。
私の診療のモットーは、患者さんに自分の頭で考えてもらうことです。医療者はあくまでも健康作りのサポーターです。患者さんが自分で自分の健康を守るために通ってくれることを、私も歯科衛生士もお待ちしています。
予防とは何か、基礎の基礎から丁寧に教えます。
お口の病気や治療についての知識量、予防意欲は人によって違います。「予防」ということ自体を知らない方も多くいらっしゃいました。私にとっては当たり前のことでも、患者さんにとっては知っていて当たり前のことではないのです。
そこで、カウンセリングの際は、予防について初歩の初歩から丁寧に教えるようにしました。モニター画面の写真や模型を使って、視覚的かつ具体的に説明します。その上で患者さんに自分の状態を知ってもらい、「次回は充填処置をします」「次はSRP(スケーリング&ルートプレーニング)をします」といった風に治療予定を伝えます。
歯科診療で使う言葉を知るとともに、その意義も理解してください。
先ほどの「充填処置」「SRP」をすぐに理解できた方は、多くはないでしょう。私たちはあえて医療用語を言い換えずに使い、皆さんにもその意味と意義を教えています。そうすることが、皆さんと認識や温度感を合わせ、予防診療を進めていくことに役立つと考えているからです。
たとえば、機械的な歯面清掃のことを「お掃除」と言った場合、「なんだ掃除するだけか」「掃除くらい自分でできる」という印象にならないでしょうか。歯科衛生士の仕事は単に掃除することではありません。病気の原因菌を含む歯垢や歯石を除去し、再付着しにくくして予防につなげる、医療行為です。また、歯面清掃をしながら、口内の異変や患者さんの反応にも注意を払っています。
その医療行為が何のために行われ、どう役立つのか、知って通院のモチベーションにしてもらえたらと思います。
お子さんに虫歯や治療の痛みを与えないためには、やはり予防です。
お子さんが歯科医院に行くのを嫌がる理由に、「治療で痛い思いをするから」「治療は痛そうだから」といったものがあると思います。それなら、「痛い経験をしない」「治療をしない」という状態であればいいわけです。
うちの法人で営んでいる歯科医院は予防に特化しており、虫歯の痛みを経験させず、歯を削る必要もなくすことを目指しています。実際、お子さんの歯を削ったケースはほとんどありません。お子さんを歯科医院嫌いにしないために、歯科医院で予防するという考え方を知ってもらえたらと思っています。
予防について伝えたつもりでも、実践しなければ意味がありません。
私がまだ大学院生だった頃、ある歯科医院で同じ患者さんの診療に3年続けて立ち会ったことがありました。その方は毎年同じ症状で受診するのですが、再発しやすい口内環境も前年のままだったのです。その口内環境と症状から、歯科医師が伝えたはずのアドバイスを実践していないことが分かりました。
この経験を通して、言葉で伝えただけでは患者さんには理解されていないことを痛感しました。それ以来、予防の本来の意味をしっかりと伝えて理解していただくことこそが重要だと考え、予防診療に情熱を注いでいます。